2009年6月21日日曜日

「剱岳 <点の記>」を観てきました

「何も足さない、何も引かない」、そんな作品ですが、劇場映画の醍醐味とすばらしい感動を与えてくれました。


台詞は最小限、音楽も作品を引き立たせるだけの黒子役。役者さんの自然体の演技に加えて、生(き)で撮影した大自然の映像が作品の質をいっそう高めているように思います。

演出すら余計なものと思わせるほど、純粋に監督されています。
だからこそなのか、ラスト近くでの、「本来仲間であり剱岳登頂の至上命令を出した陸軍がその功績を認めないシーンと、ライバルであった山岳会からの手旗信号による祝福メッセージシーンを抱き合わせた演出」は、目頭をを熱くさせてくれます。

これは私の想像ですが、木村大作氏は、「演出に懲り過ぎた、そしてCGや合成・空撮に頼り本来の撮影をおろそかにした」最近の映画にたいして、警鐘を鳴らしたかったのではないでしょうか。
役者さんの演技を大切にし、大自然をありのままに伝える、撮影をとっても大切にした作品のように思えます。
<剱岳 点の記>は、「カメラマン木村大作氏」の監督だからこそできた超自然体作品です。後世に残る名作だと思います。

昨今のテレビで流行の「長々と続く台詞、それでも表現ができないのかナレーションまで入れる」劣悪・稚拙なドラマは、もう見ることができません。

1 件のコメント:

miyacky さんのコメント...

自分も見ました、『剣岳 点の記』。

名カメラマン木村大作が新田次郎の原作を
いかに料理するのかと期待していました。
監督としての技量は未知数では多少の不安
はありましたが、素晴らしい作品でしたね。
小細工無し、山と人間の絶望的なまでの
対峙、実に簡単明瞭な映画。
奇をてらわず、目の前に広がる、ありのままを光景を映し出す。こんな簡単な事が
出来ないから映画は、深くて難しいのだが、この作品は作り手の技量だけでなく
心意気が素晴らしいから、こんな素敵な映画になるのではないでしょうか。

とにかく全体の2/3を占める山登りシーンのリアリティは木村氏が撮影監督を
務めた「八甲田山」を彷彿とさせる見事さですね。
俳優陣も浅野忠信、香川照之と実に素晴らしく、雪山でのシーンのリアルさは、
まるでドキュメンタリーを見ている気分になってしまう程、迫真でした。
まぁ難を言えば山以外のシーンがどれも単調で正直ドラマとしてはかなり退屈な
部分もありましたが、そんな部分を全て吹き飛ばしてしまうほど、登山シーンは
迫力満点、大スクリーンでこそ見る価値がある映画だと思う。